応募者への対応

送られてきた履歴書を審査する際に、履歴書だけでその応募者を却下できる場合とそうでない場合があります。

その判断は却下理由によって異なりますので、慎重に進める必要があります。

また、応募者へこの求人が労働認定証申請の為に行っているものだと伝えることは違法です。

そして、応募者が適任であるかどうかを判断する過程には、希望者や弁護士は加わることが出来ません。

却下できる理由として、以下のようなものがあります。

  • 学歴が応募条件を満たしていない。

  • 職歴が応募条件を満たしていない。

  • 永久にアメリカで働けるステータスではない。永久にアメリカで働けるステータスである人は一般的にアメリカ市民、永住権保持者だが、例外として指定難民や亡命者などもこの分類に入るので注意が必要。

  • 応募者のMinimum Salary Requirement (応募者がその額以下では働く意思がない金額)がこのポジションの給料提示額より高く、給料提示額で働くことを拒否した。

  • 募集しているポジションの職務を遂行する上で最低限必要な知識や技術が不足している。ただし、特殊な知識や技術を応募条件に入れている場合に限る。(例:特定のコンピューターソフトの知識など)

  • 日本語の読み書き能力がない。ただし、これは日本語を応募条件に入れている場合に限る。

  • 連絡を取ったのに、返答が全く無い。ただし、会社側からの連絡が誠実に数回行われている必要がある。(例:電話連絡2回にCertified Mail with Return Receiptを送付したのに返答がなかった。)

  • ReferenceやDiplomaなどの追加資料を請求したのに提出がない。しかし、これは会社の雇用過程で普段からどんな応募者に対してもこの請求を実施している場合に限る。

なお、必要な知識、技術、経験等が、雇用後の相当時間のオンザジョブトレーニングで得られる場合は、その知識、技術、経験等がないことを理由に応募者を振り落とすことはできませんのでご注意下さい。

【履歴書やアプリケーションを受け取った後の注意点】

広告掲載後に履歴書が届いたら、その受け取り日をAPPLICANT CHECK LISTに記録しておいてください。また、その後の全ての対応も記録が必要です。応募者へ電話連絡をした場合はTELEPHONE LOGにも記録をして下さい。

APPLICANT CHECK LIST

TELEPHONE LOG

履歴書を送ってきた人が応募条件を最低限満たしているかを直ちに判断する必要があります。履歴書を見た時点で、以下の条件を満たしていないと判明した応募者には連絡の必要はありません。それだけで、その応募者を却下することが出来ます。

  • 学歴が応募条件を満たしていない。(例:大卒でない、専攻が異なる)

  • 職歴が応募条件を満たしていない。(例:最低2年の職歴に対し、新卒者が応募)

しかし、上記の応募条件を満たしている応募者に対しては2、3日以内に電話などで連絡する必要があります。

電話は初回でつながらなくても、何回か連絡を取れるよう努力して下さい。

不在の際はその度に雇用主の電話番号と担当者名、用件をメッセージに残し、そしてその内容と曜日、時間などをメモに記録しておくのが理想です。

このようなメモがあれば、後に労働局からこの応募者へ適切に連絡を取ったのかを質問された場合に有効な証拠になります。

どうしても電話では応募者と連絡が取れない場合は2週間以内にCertified Mail with Return Receiptでこちらの意思を伝えて下さい。

このReturn Receiptも後に連絡したことを証明するのに非常に有効です。逆に雇用主が応募者に連絡を長い間とらなかった場合や留守番電話にメッセージだけ入れたけれど連絡がなかったと主張した場合は

労働認定証の申請を却下される可能性があります。事実、労働局が上記の事実を発見したケースではほとんど申請が却下されています。

【最初のコンタクトで質問する内容とその回答に対する注意と判断】

質問1:応募者が永久にアメリカで働けるステータスかを聞く。

注意: これを確かめるために「アメリカ市民であるか?」とか相手の人種や民族を詮索する質問をすることは違法ですのでご注意下さい。

永久にアメリカで働けるステータスであるかの質問例:

あなたはアメリカで合法的に働けますか。ちなみに当社では一切ビザのサポートなどはいたしません。

判断: 永久にアメリカで働けるステータスでない応募者はこの段階で却下できます。非移民ビザで合法就労が出来る、H1B、E2、F1(プラクティカルトレーニング中)ビザなどの応募者は却下の対象です。

質問2:応募者のMinimum Salary Requirement (応募者がその額以下では働く意思がない金額)を聞く。

注意: もし応募者のMinimum Salary Requirementが募集のポジションの給料提示額より高い場合は、応募者に提示額だったら働く気があるかどうかを聞く。

判断: 応募者に提示額で働く気がない場合はこの段階で却下できます。

質問3: 日本語の読み書き能力あるかどうかを聞く。

注意: 日本語の能力を応募条件に入れている場合に限る。

判断: 応募者が日本語の読み書き能力があるといった場合は、その会話や応対がぎこちなくても次の段階に進めなければなりません。応募者が日本語は出来ないといった場合のみこの段階で却下できます。

その他:履歴書などから学歴の詳細や職歴の詳細がはっきりしない場合は、最初のコンタクトでなるべくその点について詳しく聞き、応募者が応募条件を最低限満たしているかどうかを判断してください。

注意: 応募条件の必要学位を専門とそれに関連している分野(BA in Business or related)などとしている場合は、応募者の学位が応募条件と全く一緒ではなくても関連があると考えられる場合は次の段階に進めなければなりません。

応募条件に職歴を入れている場合においても、要求している特定の職種や職位と完全に一致していないが関連している職種や職位での経験がある場合、同じく次の段階へ進める必要があります。

もし雇用主が普段の雇用活動を行う中でReference, DiplomaやTranscriptなどの追加資料を請求している場合は、応募者に対してそれらの書類を送るよう請求することが出来ます。

判断: この時点で応募条件にある学歴や職歴がないと明確に分かった場合はその応募者を却下できます。

ReferenceやDiplomaの請求をした場合で応募者がそれらを送ってこなかったとしても、電話かCertified Mail with Return Receiptでもう一度請求して下さい。それでも、提出が無い場合はこの段階でこの応募者を却下することが出来ます。

【応募資料の保管】

応募者の履歴書や証拠資料、また応募者とのやり取りの資料は必ず保管して下さい。永住権取得後も、5年間は保管しないといけませんのでご注意下さい。

【その後のアクション】

上記の条件をまだクリアしている応募者に対しては更なるアクションをとる必要があります。その場合、面接やテストを行うのが一般的です。ここまでの条件をクリアしていた応募者に対しては最初のコンタクトの最後に面接やテストがあることを伝え、応募者の予定を聞くと2度手間にならなくて済みます。

最初のコンタクトからおおよそ1ヶ月以内には面接やテストの予定を組んで下さい。その予定を応募者に連絡する(電話もしくはCertified Mail with Return Receiptにて)わけですが、もし応募者の都合が雇用主指定の日時に合わない場合、日時の調整が必要です。指定の日に都合が合わなかったという理由では却下できませんので注意が必要です。しかし、面接やテストのアポイントを取ったのに当日現れなかった場合はその応募者を却下できます。

ちなみに雇用主は応募者が面接やテストに来る為のコスト(旅費や滞在費)を負担する必要はありませんが、遠方から応募してきている応募者には電話や質問紙などの有り得るすべての選択肢を用い、応募者を遠くまで呼び寄せることなく応募者を評価するという努力を求められています。

面接は雇用主が普段からそのポジションを探している場合に行うものと全く同一の面接基準をもって行って下さい。そして、面接では「応募者が募集しているポジションの応募条件を最低限満たしているかどうか」を的確に、且つ公平に審査することが重要で、応募者を恣意的に却下しようという意図が絶対にあってはなりません。労働認定証の申請者やそれを代行する弁護士が面接やテストに関わることも固く禁じられています。

面接やテストを行う場合は適切に面接やテストを行う必要があります。応募者が応募条件を満たしているか、そのポジションの業務をこなす能力があるかを普段と同一の判断基準で審査して下さい。具体的には面接ならば、応募者が募集している職種や仕事の内容対する知識を最低限持ち合わせているかなどの質問が適切でしょう。その他、それらの知識などをテストしたり、日本語が応募条件になっている場合は、日本語の読み書きが出来るかをテストしてみて応募者が本当に応募条件を最低限満たしているか調べることが出来ます。日本語のテストは面接の前などに一定の時間を設け、募集しているポジションで実際に使うような書類を日本語から英語に、または英語から日本語に要約してもらい日本語の読み書き能力を判断するのも1つの方法でしょう。

これらのテストは外部の専門家(第三者)に査定してもらうのが理想的です。そして、これらの記録は必ず全て詳細に渡って残しておいて下さい。

【最後に】

これらの面接やテストで応募条件を満たしていないと客観的に判断できる場合は応募を却下できますが、それでも満たしている応募者がいる場合は、アメリカの雇用市場に雇用主が求めている人材が足りないとの証明が出来なかったわけですから、労働認定証の申請は出来なくなります。ただ、最後まで応募条件を満たしている可能性のある応募者が上記のプロセスの途中で他の会社などに就職が決まった場合や、なんらかの理由で雇用主に対しての就職活動を途中で停止した場合は、アメリカ雇用市場に雇用主が求めている人材がいるとは判断されない為、PERMの申請が辛うじて可能です。これらの記録も詳細に渡って残しておく必要があります。

何故、企業スポンサーの永住権申請をする為にこのような不自然なぐらいに厳しい雇用市場調査を労働局が要求しているのか、という背景には労働局の方針として、アメリカ人の雇用、労働環境、そして賃金を不当に脅かすような外国人の雇用を防ぐという目的があります。そして、雇用主が労働認定証を申請する場合、労働局は以下の原則に基づいて申請を審査します。

労働者が必要な場合、雇用者は永久に合法でアメリカで働ける人を優先的に雇用するべきである。

従って、上記のような厳しい制約や手続きを経なければPERM労働認定証を取得することが出来ないというのが原則になっております。