【米国政府情報】ビザ保持者の継続的な審査:不適格者はビザ取消・国外退去の対象に
August 22, 2025 (Friday)
トランプ政権は2025年8月22日、5,500万人以上の米国ビザ保持者に対し、国外退去につながり得る違反の有無を精査していると発表しました。
国務省はAP通信の書面質問に対し、すべてのビザ保持者が「継続的な審査(Continuous Vetting)」の対象となっており、ビザ発給後も入国資格を維持しているかどうかが審査されると説明しました。ビザ発給時点での資格確認にとどまらず、発給後も継続的に資格を保持しているかを監視するのが狙いです。不適格と判断された場合にはビザが取り消され、ビザ保持者が米国内に滞在中の場合は国外退去の対象になるとしています。
対象者:観光客含むすべての有効な米国ビザ保持者
審査内容:ビザ発給後も継続的にビザ保持者を審査し、資格を維持しているかを確認する。不適格性が発生・発覚すれば、入国資格が剥奪される場合もある。
不適格性(Ineligibility)の基準
客観的要素:犯罪歴、テロ組織との関与、虚偽申請、不法就労・不法滞在など
新たに強調されている要素:米国の安全や利益に反する行動、反米的価値観(Anti-American Values)など
既存枠組みの強化と新たな懸念
この審査体制の強化は新しい法律を制定するものではありません。移民国籍法(INA)には犯罪歴、テロ組織への関与、虚偽申請や不法滞在など、入国や在留を認めない事由が列挙されており、今回の取組みはその既存の枠組みの中で運用されるものです。
一方で、国務省は「米国の安全や利益に反する行動」への監視強化も表明しており、さらに今年8月には移民局が「反米的価値観(Anti-American Values)」に関する審査を厳格化することを発表しています。こうした主観的要素の重視により、従来よりも広範で抽象的な基準の下で不適格性が判断される懸念があり、ビザ申請者や在留者には言動への一層の配慮が求められる状況となりました。
過去の運用事例
今春、F-1学生ビザの大規模な取締りが実施され、多数のビザが一斉に取り消される事態となりました。逮捕歴を理由に突然ビザが取り消された留学生の中には、不起訴や軽微な違反に過ぎなかったにもかかわらず、ビザの取消と同時にSEVIS(学生・交流訪問者情報システム)の記録まで抹消され、学業を継続する権利や就労資格を一瞬にして奪わたケースも多々ありました。
背景には、AIを用いた自動化システムによるデータ照合が行われたとされ、些細な刑事記録までもが機械的に不適格理由にされたことで問題が拡大したと批判され、個別の事情を考慮しないやり方は誤った判断につながりかねないとの懸念も指摘されました。この対応は過度に広範で法的根拠を欠いているとして、各地で訴訟や差止請求が相次ぎました。裁判所が学生側を支持する判断を示すと、政府も方針の問題を認めざるを得なくなり、新しい運用方法の検討に転じました。
その延長線上に今回の発表があると考えられます。審査の対象はもはや学生ビザのみならず、全てのビザ保持者が継続的な監視・審査の対象となり、さらに広範かつ包括的な取組みに発展したものとみています。
審査の行方
この審査の詳細や実際の運用方法は明らかにされていません。審査対象が5,500万人という膨大な数を人力だけで審査するのは現実的ではなく、そのためAIや自動化システムによるスクリーニングが導入されている可能性が高いと考えられます。もっとも、今春の学生ビザ大量取消の際のように、法的に疑義のある運用であれば再び訴訟に発展する可能性は高く、今後の動向が注目されます。